小平市役所
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ひと昔前の先生と生徒のふれあいについて、タマおばあさんに語ってもらう形で紹介します。
うちの子どもたちが小さいころは、警備員(けいびいん)さんじゃなくて、先生が当直(とうちょく)や宿直(しゅくちょく)を交代でやってたの。
当直(とうちょく)は休みの日の昼間の当番で、宿直(しゅくちょく)っていうのは、男の先生が交代で、夜泊まり込むんだよ。
受け持ちの先生が日曜日に当直(とうちょく)をするときにはね、子どもたちが大勢で行っていたよ。
先生もいっしょにボール遊びやら、缶けりをして、校庭で遊ぶんだって。
勉強が遅れている子がいると、少し早めに先生が呼んでくれて、補習をしてくれるから、親も助かったんだよ。
うちの息子は、受け持ちの先生が夏休みの宿直(しゅくちょく)のとき、学級の友達といっしょに泊まりに行ったことがあったよ。
「なにがそんなに楽しいんだい」って聞いたらね、「先生と肝試(きもだめ)しするんだ」って。
夜、先生が懐中電灯(かいちゅうでんとう)をつけて、学校内を見回りするんだけど、それについていくんだって。
先生は話が上手で、肝試(きもだめ)しの前に、こわい話をしてくれるんで、いっそう盛り上がったみたいだよ。
家に帰ってきてからも、理科室のがいこつの模型(もけい)が動いたとか言って、大騒(おおさわ)ぎしていたものね。
娘のときは、夏休みになると、先生が校庭で子どもたちに、はんごう炊飯(すいはん)をさせてくれたの。
カレーを作るとか言って、家から材料や薪(まき)を持っていったよ。
先生が教えてくれて、自分たちで火をおこしてご飯を炊いて、カレーを作ったみたいだね。
子どもたちが作るんだから、カレーが薄(うす)かったり、濃(こ)かったりしたようだけど、やっぱり最初から自分で作ったのが、うれしかったんだろうね。
「あんなおいしいカレーは初めて食べた」なんて、喜んで帰ってきたもんだよ。
そういえば、秋には校庭の落ち葉をためておいて、焼き芋をするから、うちの畑でとれたさつまいもを学校に持って行っていたよ。
そういうことが楽しかったみたいだね。
昔はね、今より、ずっと寒くて、ときどき大雪が降ったんだよ。
子どもたちが小学校へ行っているころは、雪が積もると、もう、手袋も靴下(くつした)も服も、びしょぬれで帰ってくるの。
「一日中、先生と雪遊びしてた」って、言うんだからね。
親もそれをわかっているから、替えの手袋や靴下(くつした)を持たせるんだけど、それさえもびしょびしょ。
雪の日は、先生が「今日は特別授業だ」って、子どもたちと雪合戦したり、雪だるまやかまくらなんか作ってたようだよ。
今みたいに防水のものなんてないから、ついた雪がとけて、ぬれてしまうの。
長靴に入った雪もとけて、さぞ冷たいと思うんだけど、子どもたちは、先生と遊べるのがうれしくて、そんなことは気にならなかったみたいだよ。
それで先生から教えてもらったって、子どもが私に雪の結晶(けっしょう)を見せてくれたことがあったの。
黒い紙に降ってくる雪をとって、虫眼鏡(むしめがね)で見ると、結晶(けっしょう)が見えるの。
私もそのとき、初めて見たんだけど、一つずつ形が違ってて、それはきれいなんだよ。
それも生きた勉強だね。
だから雪の日は、子どもたちは、よろこんで学校へ行ったもんだよ。
そのころは学校の休みは、一週間のうち日曜日だけだったよ。
その日曜日にときどき、子どもたちだけで、先生のうちに遊びに行ってたの。
特別のことじゃなくて、だれもが気安く先生のうちに遊びに行ったんだよ。
親たちも自分のうちの畑でとれた野菜なんかを持たせて、「先生のうちでは行儀(ぎょうぎ)よくしろ」なんて、言い聞かせて送り出したよ。
先生も子どもたちが来ると、よろこんでくれたみたい。
帰ってきてから、「先生のうちで食ったうまいもんをうちでも作ってくれ」って言うの。
先生の奥さんがおやつを作ってくれたんだって。
子どもによく聞いたら、どうも白玉(しらたま)と寒天(かんてん)に白みつをかけたものらしいの。
そんなしゃれたのは、うちで作ったことがなかったからね。
それに先生は何でもよく知っていて、子どもは「先生は百科事典みたいだ」って言ってたの。
それを聞いて、先生は「自分だって知らないことはあるから九十九科事典だ」って笑ってたそうだよ。
昔は、先生と子どものふれあいが、たくさんあった気がするね。
(注)市報こだいら2009年1月1日号から抜粋。
市報こだいら2009年1月1日号 こだいらちょっとむかし(PDF 625.5KB)