小平市役所
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医療が発達していなかった時代、病気については俗信を信じ、身近な植物を薬として使っていました。
小平に伝えられていた民間療法や、俗信を紹介します。
昔の小平は畑が多くて広々とした場所だったんだけど、土ぼこりがひどかったの。
春先には、赤っ風(あかっかぜ)っていう赤土が巻き上げられた強い風が吹いて、目を開けるのも大変だったね。れで目をこするせいか、よくものもらい(麦粒腫)ができたもんだよ。
今ならすぐ眼科に行くけど、昔は目医者さんが少なくてね。
おまじないなんかで、治そうとしたんだよ。
ものもらいができると、障子の破れ目から、手を出して、おにぎりをもらうの。
それを食べれば、ものもらいが治るんだって。
おにぎりに限らず、何か物をもらうだけでもいいって言う人もいたね。
井戸に行って、目籠(めかご)っていう目のあらい竹のざるを、井戸に半分だけかざし、「このものもらいを治してくれたら、全部見せます」と2・3回唱えるのもあったよ。
一円玉でものもらいを軽くこすって、道に捨てるっていうのもあったわね。
ひどい話なんだけど、一円玉を拾った人に、ものもらいも一緒に拾ってもらおうってことね。
どれもこれも効くわけはないんだけど、いろんなおまじないがあったね。
捻挫したときは、彼岸花の根をすりおろし、小麦粉と練って、痛いところに貼ると、腫れがひくんだって。
ちょっとしたけがは、どくだみやよもぎの葉をもんで傷口につけたよ。
おできができると、どくだみの葉を火であぶって、おできの上に貼るんだよ。
すると、うみが出て、早く治るの。
特に、とげが刺さったままうんだ時には、とげと一緒にうみが出てくるんだって。
どくだみの葉を干して、煎じて飲めば、胃にいいとか、お通じにいいとも言ったね。
お茶代わりに飲んでいる人もいたよ。
どくだみは十薬(じゅうやく)とも呼ばれるぐらい、色んなものに使われていたんだよ。
あせもには、桃の葉を煎じた湯をお風呂に入れたね。
虫かぶれには、みょうがの葉をもんで出てきた汁をつけたの。
昔は薬が手に入りにくかったから、効き目はともかく、身近な植物を使ったんだね。
夏の暑いとき、食欲が無くなって、頭痛や吐き気がするのを、あつけ(暑気あたり)って呼んでいたの。
あつけになると、きゅうりが熱を取るって言って、きゅうりをすりおろして、足の裏やおでこに貼り付けたんだよ。
それで涼しい所で寝ていると、具合がよくなったもんだよ。
今でいう熱中症だよね。
小平は畑が多かったんだけど、雑木林もあったんだよ。
この辺りでは雑木林のことを、やまと呼んで、堆肥にするための落ち葉を集めたり、たきつけにする小枝を拾いに行く大切な場所だったの。
ふつう、やまと言えば、高く盛り上がった所のことなんだけど、平らなのにやまと呼んでいたんだね。
そのやまには、秋になるときのこが生えるので、よく取りに行ったもんだよ。
きのこは煮込みうどんに入れて食べるんだけど、昔からの言い伝えで、必ずなすも入れるんだよ。
なすと一緒に食べれば、毒消しになるって言われていたからね。
朝早く起きてやまに行くと、いろんなきのこが出ているの。
「赤や黄色のきれいなきのこは毒きのこだ」とか、「縦にさけるきのこは食べられるきのこだ」とか、言われていたよ。
ある家の話なんだけど、木の根元に、きのこがざっくりとかたまりで生えていて、「センボンシメジだ」と喜んで持って帰ったんだって。
いつものようになすと一緒にうどんに入れて食べたら、あたってしまったそうだ。
よく調べたら、それはセンボンシメジじゃなくて、ニガグリダケという毒きのこだったんだ。
それ以来、その家では、きのこを食べなくなったんだって。
昔からの言い伝えの中には当てにならないものもあるってことだね。
鼻づまりのときは、長ねぎを枕の下に置いて寝たり、直接鼻の穴にさすといいんだって。
ぞくぞくして寒気がするときは、長ねぎを首に巻くんだよ。
ねぎを長いまま焼いて柔らかくしてから、塩をまぶして、手ぬぐいで包むの。
それを首に巻くと、ねぎが温かくて、気持ちがいいんだよ。
ごぼう汁っていうのも、よく作ったね。
ごぼうをすりおろして、おわんに入れ、かつお節とみそを加えて、熱湯を注げば出来上がる簡単なものなんだけど、熱々の汁を飲んで寝ると、風邪も治る気がしたよ。大人はカリン酒や日本酒を温めて卵を入れた卵酒を飲むこともあった。
体を温めて、十分睡眠をとって、風邪を治そうとしたんだね。
(注)市報こだいら2021年1月1日号から抜粋。
市報こだいら2021年1月1日号 こだいらちょっとむかし(PDF 1.9MB)