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玉川上水(小平市の昔話)

更新日: 2022年(令和4年)1月1日  作成部署:企画政策部 秘書広報課

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小平の南を流れる玉川上水にちなんだ、ちょっと昔のお話を紹介します。

昔の玉川上水の様子

玉川上水ができる前は、この辺りは一面のススキ野原で、水が乏しく、人が住めない場所だったんだって。
玉川上水ができ、用水を引いて、畑を作り、人々が生活できるようになっていったんだね。
それからずっと、玉川上水は流域の村々をうるおし、江戸、東京の町へ飲み水を送り続けてきたんだよ。
昭和四十年ごろまで、玉川上水の土手には桜の木しかなかったの。
下草も短く刈りそろえてあって、日当たりが良くて、気持ちが良い場所だったよ。
土手は今より広くて、よく歩いたけど、今みたいに柵がなかったので、落ちないように注意したものだよ。
ときには、大きなヘビがとぐろを巻いて、日向ぼっこをしていたね。
アオダイショウというヘビで、毒はないんだけど、びっくりして、思わず逃げ帰ったこともあったわね。
今は、上水のふちに、たくさんの木が生い茂っていて、昔とはずいぶん違うね。

玉川上水のお花見

玉川上水沿いのお花見の様子
玉川上水といえば、昔は、春のお花見がなにより有名だったんだよ。
上水ができて、五十年ほど後に、川崎平右衛門という代官が、桜の苗木を1,000本、村人に植えさせたのが、玉川上水のさくらのはじまりだそうだ。
桜が植えられたのは、小金井橋の上流と下流3キロメートルずつの計6キロメートルなんだよ。

桜が成長すると、江戸随一の花見の名所になったんだよ。
桜の時期には、近くの村々だけじゃなく、江戸からも泊まりがけで花見客がやってきたそうだ。
明治十六年には、明治天皇が、馬でお花見に来られたんだよ。
小金井橋近くの海岸寺の前あたりで休まれたので、それを記念して植えられたのが、行幸の松なんだって。
小平の御幸町は、この行幸にちなんで、名づけられたんだね。

明治の中頃に中央線がひかれると、日帰りで、東京からたくさんの人が来たんだって。
昔は、上水の土手にござを敷いて、花見をしている人たちがたくさんいたの。
上水沿いの農家では、自分の家の前に赤い布を敷いた縁台を並べ、花見客に料理や酒を出したものだよ。
小屋掛けをしたり、座敷を開けて、上がれるようにしたりする家もあったんだよ
料理は農家が作るものだから、たけのこや芋の煮物、卵焼き、いなりずし、のり巻きなどだったね。
さくらん棒という甘いふ菓子や、造花で作られた桜の花のかんざしなんかも、並んでたね。

ぼたもちのイラスト
ぼたもちを作るのが上手なおばあさんが、ぼたもちとだんごの店を出していたよ。
どこの家でも入口に大きな赤や紫ののれんをかけて、とってもきれいだったよ。
花見のときだけで、一年分のお金が入った家もあったんだって。

今では、五日市街道の交通量が増えたりして、桜の木もずいぶん弱ってしまい、昔みたいなお花見ができなくなってしまったけどね。

玉川上水の通船

船を曳いている様子
明治時代にほんの一時だけ、玉川上水に船が通ったことがあったんだよ。
明治三年から五年までの、たった二年間だけなんだけどね。
船といっても、上水の幅が狭いから、公園の池にあるボートぐらいの大きさだったそうだよ。
すれ違うのも大変で、上水を下る(東京に向かう)日と、上る(多摩に向かう)日に分けられていたそうだよ。

船には、おもに野菜やまき、炭、酒、織物などを乗せ、一日かけて上水を下って、東京に運んだんだよ。
帰りは、多摩にない塩や塩魚を乗せて戻ってきたんだよ。
流れに逆らうので、二人の人が船にロープをつけ、両岸から引いて、羽村まで歩いていったんだって。
だから、帰りは三日もかかり、賃金は二倍とられたんだって。
芝居や東京見物にいく人も乗ったそうだよ。
玉川上水を船で下って、お屋敷に奉公にいった人がいたんだって。
行儀作法やお裁縫を習えるので、このあたりの大きな農家や商家の娘が、花嫁修業に行ったんだよ。
江戸時代なら御殿女中(宮中・将軍家・大名などの奥向きに仕えた女中)だけど、このときはもう明治時代になっていたから、どこかの大きなお屋敷に行ったんだろうね。
通船は、100そうもの船があって、とてもにぎわったんだって。
だけど、船が通ると、どうしても水が汚れてしまい、帰りの船を引くことで堤が崩れるので、二年ほどでなくなってしまったそうだよ。
今でも、ところどころに、当時の船着場の跡が残っているよ。


(注)市報こだいら2022年1月1日号から抜粋。

市報こだいら2022年1月1日号 こだいらちょっとむかし(PDF 1.9MB)

 

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