小平市役所
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小平の農作物ちょっと昔のお話を紹介します。
陸稲は、田んぼでとれるお米に比べ、粘り気が少なく、ぽろぽろしていた。
しかも、ふだんは陸稲に大麦を混ぜて炊くので、炊きたての温かいうちは、まだいいけれど、ご飯が冷えてしまうと、いっそうぽろぽろして、おいしくなかったね。
だからお弁当に持っていくときは、なるべく大麦の少ないところをよそって、持って行った。お米だけのご飯が食べられるのは、お盆やお正月など、特別なときだけだったね。
陸稲にも、うるち米ともち米があるの。
陸稲のもち米でついたのは、お餅なのに、粘り気が少なくて、あまり伸びないんだけど、それでもおいしく感じたね。
お正月は、お米だけで炊いたご飯や、お餅を食べられるから、みんな心待ちにしていたよ。
小麦は、用水沿いのところどころにあった水車小屋に持っていって、粉にしたの。それを家でうどんに打ったの。
うどんは打つのに手間がかかるから、ふだんは食べられない。
でも、農作業が一段落して暇ができたときや、雨で農作業ができないときなんかに、うどんを打つの。それが楽しみだったね。
小平では糧(かて)うどんを食べていたよ。糧とは、冬はほうれん草や大根、夏はなすを細く切ってゆでたもののことなの。
その糧と一緒に、うどんを濃いめの汁につけて食べるの。手打ちうどんは、のめっこくて(つるつるして)、とてもおいしいのよ。
また、うどんのように長く良いことが続きますようにと言って、お祝い事にうどんはつきものだったね。
蚕にぬれた桑の葉をやると、病気になってしまうからね。
秋には、桑の葉が風にあたってしおれないように、枝ごと切って、穴ぐらに入れておいた。
入れておくと、一日ぐらいは桑の葉もしゃんとしていたよ。
葉っぱといえば、五月ごろの茶摘みのときには、お茶の葉も、出荷するまで、しおれないように、穴ぐらにすぐに入れておいたね。
寒くなってくるころには、冬に備えて、さつまいもや里芋、畑でとれた野菜なども入れて、保存できたので、穴ぐらは農家の生活にとても必要だったね。
また、穴ぐらほど大きくはないけど、芋穴とか、さつま穴といって大人の腰ぐらいの穴も作ったの。
そこにはちょくちょく使う芋類や野菜を入れて、わらをかぶせ、その上に土をかけておくの。
そうすると新鮮さも保てて、すぐに掘って、使えたのでね。
穴ぐらも芋穴も、とても便利なものだったよ。
そうするとトラックが集めに来て、中野の方の市場に運んでいったの。
このさつまいもは焼き芋や料理など、いろいろと使われていたらしいよ。
小川(現小川町)の方の農家では、さつまいもの出荷時期になると、朝早く、さつまいもの問屋さんが買い付けに来ていたの。
「今日はいくらで」と、日によって問屋さんが言う値段が違うから、農家ではさつまいもを値段が高いときに出したよ。
だから、さつまいもを出す日には、朝から家族総出で、さつまいものつるを切って、大きさをそろえて俵に詰めるから、大忙しだったね。
どこの家でも、二十俵(ぴょう)とか三十俵を通り(青梅街道)に面した家の常口(じょうぐち)(入口)に出しておくんだけど、夕方になって冷えてくると、さつまいもが霜げてしまう(寒さでいたむ)から、大抵昼間にトラックで集めに来たの。
(注)市報こだいら2023年1月1日号から抜粋。
市報こだいら2023年1月1日号 こだいらちょっとむかし(PDF 1.9MB)